売上好調・スタッフも充実。それでも「40点」と言い切る院長がいる。
新美理事長の数字への意識は、勤務医時代につくられた。愛知県で研修医をしていた頃、違和感を覚えたという。「先輩たちが誰もその日の売上とか自分の売上を知らなかったんです。興味がないのか」。「ここで研修していてもそこは追えないな、と思って辞めて、大阪に就職しに行きました」。移った先は「売上が全て」という文化の医院で、毎日・毎週・毎月の売上が張り出され、全ドクターの売上ランキングが発表された。
開業して半年ちょっとでコロナが始まる。それでも「振り返ってみれば、別にたいしたことなかったな、という感じです」と振り返る。開業5年で急成長した新美歯科だが、今年のテーマに掲げたのは「基礎完成」だった。バックオフィスを設立し、Notion・Slack・AIを活用する道を選んでいる。
(取材・文:mitoki編集部)
売上は伸びていても、自己採点は40点だった
先生の歯科医院としての「100点」があるとして、今は自己採点で何点ぐらいですか?
え、40点ですか? 発表会での右肩上がりのグラフや、スタッフさんもいいというお話を聞くと、意外です。残りの60点は何なんですか?
今年のテーマでもありますが、「基礎完成」です。ここまで来て基礎が全然なんです。僕からするともうそろそろ応用のステップに入っていて、Notionとかも活用していますが、まだ整えている段階。人の教育もそうだし、教育マニュアルもほとんどまだできていない状況です。一番は「入社オリエンテーション」をやっていないことだと思っています。来年ぐらいからは絶対やりたいんですけど。僕の思いとか考え方が伝わっていない。ユニクロとかのように入社したら1ヶ月研修する、みたいなことをやらない限りは、自分の思い描いたものにはならない。みんなが自然と登ってきて、やっと40点かなという感じです。正直甘く採点してそれくらいです。
大手企業のようなオリエンテーションの仕組みを、歯科医院で組もうとされているんですね。先生の周りで、そういった仕組みを組んでいる医院さんはあるんですか?
僕より大きい規模の歯科医院は全員やってます。大きい医院では標準です。やっていない医院はありえないです。売上規模的にも、人数的にも。
開院してからこれまでで、一番大変だったことは何ですか?
開業メンバーの衛生士さんとか、仲良かった子たちが、同じ年に3人ぐらい産休とか、結婚して東京や鳥取に引っ越すとかが重なった時ですね。
8月とかに固まって、主要メンバーの衛生士さんが3名退職せなあかんとなった時は、やっぱり文化が伝わらなくなってしまったので、大変だったかなと思います。新しく入ってきた子たちも十分いい子で問題ないんですが、開業の時からずっと口酸っぱく言ってきたことが伝わっていないので。
主力メンバーがごそっと抜けるのは、どの組織でも大変ですよね。
うちの場合は、退職の半年前ぐらいにはみんな言ってくれるんで。ただ、半年間募集しても、いい人材が来ないんですよね。何名か応募はあっても、いい人材じゃないというか。雇ってみたけどやっぱり違うな、というのもありましたし。そこから1年は苦労しました。
採用がうまくいかなかった原因は、何だったのでしょう。
当時採用した子たちがマッチしなかったので、その後に「ちょっと厳しい」とか「やること多い」みたいな悪評が流れたんじゃないかなという感じはしました。地域で実際に聞いたこともあります。うちは成長してほしいから「これもあれも覚えて」と言うじゃないですか。成長志向じゃない子を雇ってしまった結果、アンマッチが起きてしまった。
うちは雰囲気重視でやっている歯科医院なので、今はInstagramが浸透してくれて、「雰囲気がいいな」というのが伝わっています。Instagramで医院の雰囲気を伝えるというのは、もうものすごく良かったことかなと思います。ほぼ全員が「Instagramを見てきた」と言います。
ツールより先に、バックオフィスをつくる
もしご自身がもう一人「新美歯科」にいるとしたら、どんなことを任せたいですか?
僕がやりたくてやれていないことをやってもらいたい。そうなったら「教育」ですね。教育マニュアルを作るとか。今は時代が違うので、僕らの時のように終電まで練習して、始発で来て、みたいなブラックな働き方はさせられないし、する人もいない。そういうところで成長ができていないな、というのが僕の思いなので。マニュアルを作って手取り足取り教えてくれる人が欲しい。僕は朝から夕方まで診療半分、経営半分やっているので、教育がゼロになっちゃっている。そこを全部やってくれる人が欲しいですね。
まず事務部門を作りました。ほんまのただの「医療事務」の求人です。バックオフィスを設立するからそのメンバーになりませんか、という形で採用しました。
Notionを情報管理ツールとして選ばれたきっかけは何ですか?
YouTubeで独学しているんですが、見ているチャンネルの方がNotionをお勧めしていることが多かったんです。問い合わせた時に、もともとあったパッケージのデザインを見て、「このデザインが一番まとめやすいな」と思って選びました。Googleドキュメントとか Google系が、僕はどうしてもマッチしなくて。
AI活用の目的は「何より時短」だった
ChatGPTが出てきて、何やろうな、と思ってやってみたらすごくて。あとは何より「時短」です。今まで時間かけてやっていたデータ収集、分析、スライド作り、メールの返信とか、そういったところが的確だし早い。時短のためにAIを勉強しました。
Gensparkを使いこなしている度合いは1位かもしれないですね。トップ5には入っていると思います。今はほぼGenspark一択です。前まではChatGPTしか教育できていなかったんですが、Gensparkも僕のことを認識してくれるようになってきたので。そこにGeminiとかClaudeとかも全部入っていますし、それで困ることはなくなりました。
ChatGPTの方が僕のことを知っているレベルはまだ高いですが、ブログを書く時などはChatGPTの方がいいブログを書いてくれます。Gensparkだとネットから拾ってきた寄りになっちゃうので。でもGensparkの方が優秀だと思っているので、そっちを染めていけたらなと思ってます。
「入れなかったら絶対に後悔する」——DXに踏み出す院長へ
同じようにDXを進めたい医院には、何が必要だと思いますか?
バックオフィスという言葉が浸透しないと、NotionもSlackも始まらないのかなと。僕はバックオフィスを機に人材が入ってきたり、Notion、Slackを入れたりしたんです。バックオフィス設立支援、みたいな形で攻めてもらえたら、この業界もNotionとかSlackが浸透するのかなと思いました。
経営方針も、毎回同じ内容を伝えていけば変わるかな、と。下半期ぐらいからやっと動き出すかな、みたいな感覚です。ペーパーレス化や受付の無人化も、まだこれからですね。
今は、ツールを入れていない医院が絶対に後悔する時代だと思うので、先生方には「まずは入れてみてください」と言いたいです。
まとめ
- 口伝えに依存した組織は、主力スタッフの退職で文化が途絶える
- ツールより先にバックオフィスを設立し、院長の手を空ける
- バックオフィスを起点にNotion・Slackを導入し、属人化からの脱却に着手する
- AIはデータ収集・分析・資料作成の時短に効き、院長の時間を空ける
歯科医院のバックオフィス設立・Notion/Slack導入・
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「何から始めたらいいか分からない」——
新美理事長も、最初はそこからでした。
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