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歯科医院の在庫管理を紙からデジタルへ|Excelやスプレッドシートで管理するメリットと具体的な移行手順

整理された歯科用品の棚の前でタブレットを確認する人物のイメージ
INVENTORY MANAGEMENT

歯科医院の在庫管理を
紙からデジタルへ

在庫管理にまつわることで、院内でこんなことは起きていませんか。

  • まだあると思っていた材料が、棚を見たら残りわずかだった。
  • 発注したばかりなのに、別のスタッフも同じものを注文していた。
  • 在庫のことは担当者しかわからず、休みの日は誰も判断できない。
  • ほとんど使っていない材料が、気づいたら使用期限を過ぎていた。

実はこうしたトラブルは、紙の在庫記録をExcelやスプレッドシート※へ移すことで、解消できるかもしれません。
※スプレッドシートはGoogleが無料で提供する表計算ツールです。Excelとほぼ同じ感覚で使え、スマートフォンからの確認や複数人での同時編集ができます。

この記事では、歯科医院の在庫管理をExcelやスプレッドシートで運用するメリットと、紙から移行するための方法を共有します。

紙の在庫管理で起きやすいトラブル

紙の記録は「書いた場所にしか情報がない」ため、診療が忙しくなるほど次のようなことが起きます。

  • 欠品のリスク
    手書きの字が読めない、書き方が人によって違う、ノートを紛失・汚損するといったことで、記録の数字の信頼性が低下します。その結果、必要な物がなく診療に支障が出るなどのトラブルが起きます。
  • 重複発注のリスク
    過去の発注記録をさかのぼって探すのに時間がかかり、「もう頼んだか」を確認できないまま重ねて注文してしまいます。その結果、余剰に在庫を保有することになります。
  • 動いていない在庫に気づけない
    紙では品目をまたいだ一覧や並べ替えができないため、ほとんど使っていない物が棚に眠り続けていても気づけません。結果として、使われないまま使用期限を迎え、廃棄になります。

紙で在庫を管理すると、上記のように在庫と発注の情報が分散し、いまどういう状況なのかが見えにくくなります。これはスタッフの注意だけで防ぎ続けるのは難しいため、在庫管理の運用そのものを変えていく必要があります。

Excelやスプレッドシートに移すと、何が変わるのか

紙の記録をExcelやスプレッドシートに移すと、分散していた在庫と発注の情報を1つの表に集められます。さらにAIなどを活用していくと、次のようなメリットがあります。

  • 欠品と二重発注を防げる
    在庫が発注の目安を下回ると、欠品のリスクがあることを通知できます。担当者が気づいていなくても「注文した方がよい」というアラートを出せます。また、発注しようとした時に、その物品がいま発注済みかどうかを参照できるため、二重発注を防げます。
  • 担当者が現場にいなくても対応できる
    紙の場合、院内にいなければ在庫の状況を把握できません。デジタル管理にすると、スマートフォンなどから院外でも状況を確認できるため、いつでもどこでも確認や適切な対応が取れます。
  • 事務作業の工数を削減できる
    AIを活用すると、発注にともなう金額の反映や経費申請など、事務作業の入力を自動で処理できます。これまで事務作業にかかっていた工数を削減できます。
  • 入力の工数を減らし、より詳細に管理できる
    写真を撮って画像で管理したり、納品書をスキャンして反映したりできるため、紙に比べて入力にかかる時間が減ります。これまでより多くの情報を管理表上で扱えるため、保管場所や発注先なども含めて1つの表で管理できます。

以上のように、デジタル管理に移すことで、紙の管理で発生していたさまざまなトラブルを回避できるようになります。次の章では、デジタル管理へ移行するための方法を紹介します。

紙からExcel・スプレッドシートへ移行する方法

紙からExcelやスプレッドシートへの移行は、段階を踏んで進めることが成功の鍵です。管理対象やルールを整えないまま一度にすべてを切り替えると、記録と実物のずれや入力漏れが重なり、紙で管理していた時以上に混乱を招くおそれがあります。ここでは、医院の負担を抑えながら確実に移行するための手順を、5つのステップに分けて紹介します。

STEP 01運用ルールを決める

表を作る前に、まず「誰が・いつ・何を・どの端末で記録するか」という運用のルールを決めます。デジタル管理がうまくいくかどうかは、ツールの出来よりも、忙しい日にも更新が続く仕組みになっているかで決まります。

在庫管理で記録が必要になる場面は、次の4つです。それぞれについて、担当者・記録するタイミング・入力に使う端末を決めます。

  • 入庫
    届いた品物を確認した時に、誰が記録するか。
  • 出庫
    倉庫から診療室へ取り出した時に、誰がどのタイミングで記録するか。
  • 発注
    誰が、いつ注文するか。
  • 棚卸し
    どのくらいの頻度で、誰が実物と管理表を照合するか。
このステップのポイント

入庫・出庫・発注・棚卸しのそれぞれについて、責任者を明確にし、役割分担と入力する端末を決めておくことが重要です。担当者が自分の役割を自覚して記録しなければ、どれだけ表を整えても運用は回りません。また、使う場所ですぐに入力できるかで記録漏れが決まるため、「倉庫にiPadを置く」のように端末の置き場所まで決めておくのがおすすめです。

STEP 02移行日を決めて、一斉に切り替える

運用ルールが決まったら、紙からデジタル管理へ切り替える日を決めます。切り替えは、移行日を決めて一斉に行うのがおすすめです。一部の物品だけを先にデジタルへ移すと、紙とデジタルの二重管理が発生し、どちらが正しい数字かわからなくなります。

一斉に切り替えるための進め方は次のとおりです。

  1. 移行日を決め、スタッフ全員に共有します。
  2. 移行日の直前に、院内の在庫を数える日を設けます。棚ごとに担当を分け、作業をまとめて行います。
  3. 数えた結果を、移行日に管理表へ入力します。この数量が、デジタル管理の開始在庫になります。
  4. 移行日以降は管理表を正とし、紙の記録は参照用として保管します。
このステップのポイント

移行日を決め、在庫を数える日と入力する日をあらかじめ押さえておくことがポイントです。日を決めずに少しずつ移そうとすると二重管理の期間が長引き、スタッフの負担が増えて移行そのものが止まりかねません。

STEP 03管理表を作り、発注の目安を決める

STEP 02で絞った物品を対象に、Excelやスプレッドシートのシートへ、品名・数量・注文状況を記載していきます。

管理表に入れる項目の例は次のとおりです。

在庫管理表に入れる項目
項目記録する内容
品名同じ物品を識別できる名称
数量いま記録されている在庫の数
単位箱・袋・本など。数量と単位は必ずセットで明記します。
保管場所倉庫A、診療室の棚など、物品を置いている場所
最終更新日最後に数量を更新した日
発注点この数を切ったら注文する、という数
発注残注文済みで、まだ届いていない数量
納品予定日発注残が届く予定の日
発注先注文先の業者やサイト

上記は、在庫管理表として一般的に使われる項目です。医院でさらに必要な情報があれば、項目を追加して構いません。

実際に入力すると、次のような表になります。

記入例〈品名・数量はすべて架空〉
ABCDEFGHI
1品名数量単位保管場所最終更新日発注点発注残納品予定日発注先
2グローブA(Mサイズ)8箱倉庫A10/14100○○商会
3グローブA(Sサイズ)15箱倉庫A10/14100○○商会
4紙コップB3袋倉庫B10/1341010/17△△デンタル
5エプロンC12袋倉庫B10/1350△△デンタル

グローブAは、MサイズとSサイズを別の行にしています。同じ品目でも、サイズごとに行を分けて記録するのがおすすめです。サイズ単位で残数が見えるため、特定のサイズだけ欠品することを防げます。また、このあとの自動化でも、行ごとに判定できる方が運用しやすくなります。

発注点と発注量を決める

表の形が整ったら、次は発注のタイミングを決めます。在庫管理で最も避けたいのは、必要な時に物がない状態です。これを防ぐために、品目ごとに次の2つを決めておきます。

  • 発注点
    この数を切ったら注文する、という数です。
  • 発注量
    発注点を切った時に、1回で注文する数です。
在庫の推移と発注点のイメージ 予備 納品までの日数 在庫 日数 発注点 ここで発注 納品 発注点 = 納品までに使う量    + 予備
在庫が発注点まで減ったら注文し、届くまでの間は手元の在庫で持ちこたえます。予備は、使用量の増加や納品の遅れに備える分です。

発注点の求め方

発注点は、「注文してから届くまでに使う量」に「予備」を足した数です。グローブのMサイズを例に、順に計算してみます。

  • 1日に2箱使う
  • 注文してから届くまで3日かかる
  • 予備として4箱は常に持っておきたい
発注点の計算〈グローブMサイズの架空例〉
届くまでに使う量:2箱 × 3日 = 6箱+ 予備 4箱= 発注点 10箱
在庫が10箱まで減った時点で注文すれば、届くまでの3日間で6箱使っても、4箱の予備が残る計算です。

1日の使用量と納品までの日数は、自院の実績と業者への確認をもとに決めます。予備の量は、発注先でトラブルが起きて納期が遅れても耐えられる量を目安に設定するのがおすすめです。

発注量の決め方

発注量は、次に発注点を切るまでに使う量を目安にします。同じ例で2週間に1回の発注にするなら、1日2箱 × 14日 = 28箱が目安です。1ケースの入数に合わせて切り上げます。

多めに注文すれば発注の回数は減りますが、使い切れない在庫が棚に残り、材料費と保管場所を圧迫します。過度な発注にならないように気をつけましょう。

このステップのポイント

数量には単位を必ず明記し、同じ品目でもサイズごとに行を分けること、そして品目ごとに発注点を決めておくことがポイントです。表の形と発注の基準がそろっていれば、集計や通知の自動化につなげることができます。

STEP 04集計と確認を自動化して、手間を減らす

ここまでで、Excelやスプレッドシートに入力すれば運用できる準備が整いました。ここからは、AIを活用しながら欠品などのアラートを出す仕組みと、事務作業の工数削減に向けた自動化の取り組みを紹介します。

欠品アラートを設定する

発注点を下回った品目を、担当者が表を見に行かなくても把握できる仕組みをつくります。方法は大きく2つあります。

1. AIのスケジュール機能で通知を受け取る

ChatGPTやClaudeには、決まった時刻にあらかじめ指示した内容を自動で実行する機能があります。[1][2]管理表を置いたGoogleドライブなどを連携しておき、次のように指示しておけば、表を開かなくても通知で気づけます。

AIへの指示の例

「毎朝〇時に、Googleドライブの『〇〇』を確認してください。数量が発注点以下の品目があれば、品名・数量・発注点・発注先を一覧にして通知してください。なければ『発注が必要な品目はありません』と伝えてください。」

2. Google Apps Scriptで通知する

Google スプレッドシートに付属するGoogle Apps Scriptを使う方法もあります。AIサービスの有料プランが不要で、通知先をメール・LINE・Slackなど自由に選べます。仕組みは次のとおりです。

  1. 管理表の「数量」と「発注点」の列を読み取り、数量が発注点以下の行を抽出するスクリプトを書きます。
  2. 抽出した品目を、Gmailやチャットツールへ送る処理を加えます。
  3. 「毎朝9時に実行」のような時間主導型トリガーを設定します。

スクリプトは数十行程度で済みますが、作成と保守には多少の知識が必要です。院内に担当できる人がいない場合は、AIにスクリプトの作成を依頼するか、外部に相談する方法があります。

発注にともなう事務作業を自動化する

通知を受けて発注したあとにも、記録や事務の作業が残ります。AIを活用すると、次のような作業もある程度まで自動化できます。

  • 納品書を読み取り、入庫を管理表に反映する
    納品書を写真やスキャンで読み取り、入庫の数量と日付を管理表に反映します。
    指示の例「この納品書の画像から品名・数量・納品日を読み取り、『〇〇』シートの該当する品名の数量に加算して、最終更新日を納品日に更新してください。該当する品名がない場合は追加せず、知らせてください。」
  • 注文メールの下書きを作成する
    発注が必要な品目をもとに、発注先ごとの注文メールの下書きを作成します。
    指示の例「『〇〇』シートで数量が発注点以下の品目を発注先ごとにまとめ、注文メールの下書きを作成してください。数量は発注点の〇倍を目安にし、送信はせず下書きのままにしてください。」
  • 月ごとの材料費を集計する
    発注履歴から、月ごとの材料費を集計します。
    指示の例「『〇〇』シートの今月の発注を発注先ごとに集計し、合計金額と前月との差を『〇〇』シートに反映してください。」
このステップのポイント

AIを活用する場合は、管理表へのアクセス許可、Googleドライブなどとの連携、ネットワーク環境がそろって初めて動きます。設定したら必ずテストを行い、通知が届く、管理表が更新されるといった一連の流れが回ることを確認してから実運用に移すことがポイントです。

STEP 05改善ポイントを確認して、修正する

運用を始めたら、一定期間ごとに振り返り、ずれている箇所を直します。最初に決めた発注点や担当者の設定は、あくまで仮の値です。実際に運用してみて初めて、合っているかどうかがわかります。

振り返りでは、次の点を確認します。

  • 欠品しかけた品目・余った品目はないか
    欠品しそうになった品目があれば発注点を上げ、注文したのに余っている品目があれば発注量を減らします。
  • 材料費の使いすぎがないか
    STEP 04で集計した月ごとの材料費をもとに、売上に対する材料費の割合の推移を確認します。割合が上がっていれば、余剰在庫や発注量を見直します。
  • アラートは届いているか
    発注点を下回った時の通知を、担当者が実際に受け取れているか。
  • アラートを見た時、誰が発注するか
    通知を見た人がそのまま発注できる体制になっているか。担当者不在の日に止まっていないか。
  • 記録漏れはないか
    管理表の数字と実物に差が出ていないか。差があれば、どの場面の記録が抜けやすいかを確かめます。

漏れや改善が必要な箇所が見つかれば、発注点・発注量・担当・通知の設定を見直します。この振り返りを繰り返すことで、自院の実態に合った運用になっていきます。

このステップのポイント

振り返りの日をあらかじめ決めておくことがポイントです。たとえば運用開始から2週間後と1か月後に、院長と担当者で上の項目を確認します。

まとめ

紙の在庫管理で起きる欠品・二重発注・余剰在庫の根本にあるのは、在庫と発注の情報が分散し、現状を誰も把握できていないことです。Excelやスプレッドシートへ移行すれば、これらを1つの表で管理でき、AIと組み合わせることで欠品の通知や事務作業の自動化まで実現できます。

特別な設備や投資は必要ありません。どの医院でも、今日から取り組める改善です。

ただし、成果を左右するのは進め方です。運用ルールを決め、対象を絞り、管理表と発注の基準を整えたうえで自動化へ進む。この順番を守ることが、現場に負担をかけずに定着させるための鍵となります。

自院のスタッフだけで進めるのが難しい場合は、mitokiにご相談ください。紙からデジタルへの移行を、運用設計の段階から支援しています。

在庫管理のデジタル化を、
スタッフと一緒に進めたい方へ

運用ルールの整理から管理表の作成、AIによる通知の設定まで、医院の状況に合わせて移行をサポートします。まずは現状をお聞かせください。

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参考資料・出典

[1]OpenAI「Scheduled tasks in ChatGPT」

[2]Anthropic「Schedule recurring tasks in Claude Cowork」

mitoki

この記事を書いた人

梅澤 幸太

歯科衛生士・プロダクトマネージャーとして、医療業界のAI/DX活用の普及に取り組んでいます。

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