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医療情報システムの安全管理に関するガイドラインとは|歯科医院が確認すべきことと対策の進め方

歯科医院で対話しながら業務を確認する人物のイメージ
INFORMATION SECURITY

院内のセキュリティを、
国のガイドラインに
沿った高い水準へ

患者情報の管理について、院内でこんなことは起きていませんか。

  • 情報流出のニュースを見るたびに、現在の対応で十分なのか不安になる。
  • スタッフ全員で同じIDを使っていて、このままでよいのか気になっている。
  • USBメモリの持ち出しは制限しているけれど、それ以外の対策はよくわからない。

企業や医療機関へのサイバー攻撃が相次ぐいま、患者情報を扱う歯科医院でも適切な安全管理が求められています。

その指針となるのが、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」です。

この記事では、ガイドラインに沿って対策を進めるメリットと、院内で実践できる具体的な方法を紹介します。

情報漏えいで生じる責任と影響

患者情報が漏えいすると、患者さんへの説明や行政への報告、損害賠償などが必要になる場合があります。システムの停止による診療への影響や、復旧費用も医院の負担になります。[1]

実際に、医療機関では次のような被害が起きています。

  • 私物のパソコン1台から、1,365件の患者情報が漏えいした可能性
    2026年6月、藤田医科大学病院は、患者情報を保存していた職員の私物パソコンがサポート詐欺の被害に遭ったと公表しました。氏名や病名などを含む情報に漏えいの可能性があり、対象患者への報告と相談窓口の設置を発表しています。[2]
  • 電子カルテが使えず、通常診療の再開まで約2か月
    つるぎ町立半田病院では、2021年10月31日のサイバー攻撃で電子カルテなどが利用できなくなりました。通常診療を再開できたのは、年を越した2022年1月4日でした。[3]

医院に生じる主な対応と責任は、次のとおりです。

  • 報告・本人通知
    診療情報などを含む個人データが漏えいした場合や、そのおそれがある場合は、原則として個人情報保護委員会への報告と本人通知が必要です。[4]
  • 行政による指導・命令
    安全管理などの義務に違反した場合、個人情報保護委員会による指導・勧告・命令などの対象になることがあります。[5]
  • 損害賠償
    患者さんに損害が生じた場合、民事上の責任を問われることがあります。[6]
  • 刑事罰
    行政命令への違反や、不正な利益を得る目的での患者情報の提供など、法律で定められた行為が対象になります。[5]

患者情報と診療を守るために、国のガイドラインに沿って、日頃の対策と事故時の備えを整えておきましょう。

ガイドラインの概要

厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は、医療情報を安全に扱うための指針です。2026年10月時点の最新版は第7.0版です。[1]

ガイドラインは、医療情報システムの導入から運用、保守、廃棄までを対象に、必要な対策を立場ごとにまとめています。[1]

  • 経営管理編
    院長など経営層が判断・指示すべきこと
  • 企画管理編
    院内の体制や規程など、安全管理の仕組みづくり
  • システム運用編
    パソコンやソフト、ネットワークの設定・運用
  • 保守委託機関編
    保守を業者に任せている小規模な医療機関向けの対策

この記事では、厚生労働省のチェックリストの項目を中心に、歯科医院が院内で進めるべき対策を紹介します。

ガイドラインに沿った対策の進め方

ガイドラインに沿った対策を進めるうえで大切なのは、現状を確認し、優先度をつけて段階的に進めることです。次の4つのステップで、体制づくりから設定、日々の運用、事故への備えまで順に整えましょう。

ただし、進める中で不正アクセスの疑いやバックアップの不備が見つかった場合は、その対応を優先してください。

STEP 01責任者を決め、機器とシステムを把握する

まずは責任者を決め、院内のどこに患者情報があり、誰が使っているかを把握しましょう。対象は、院内で使っている端末(パソコン、タブレット、スマートフォンなど)やITツール(電子カルテ、レセコン、レントゲン、予約管理、院内の連絡ツール、業者との連携ツールなど)すべてです。把握した内容は機器台帳とシステム一覧にまとめ、チェックリストで点検します。

POINT 01安全管理の責任者を決める

  • 医療情報システムの安全管理責任者を決め、書面に残します。
  • 責任者が不在のときに対応する代行者も決めておきます。[8]

POINT 02機器台帳をつくる

院内のサーバー、パソコンやタブレット、ルーターなどのネットワーク機器を、すべて書き出します。

機器台帳(記入例)

ABCDEFGH
1管理番号種別機種設置場所利用者・用途保守委託先更新の方法・最終適用日サポート終了日
2PC-001端末ノートPC受付受付スタッフ(予約・会計)○○システム自動更新・2026/10/012031/10
3SV-001サーバ院内サーバー院長室電子カルテのデータ保存○○システム業者が月1回適用2029/03
4PC-002医療機器付属PCレントゲン付属PC診療室X線撮影・画像の確認○○メディカルメーカーに確認中メーカーに確認中
5TB-001端末タブレット受付問診の入力なし自動更新・2026/10/012028/09
6NW-001ネットワーク機器ルーター受付裏院内のインターネット回線○○通信自動更新・2026/09/152030/03

1台につき1行で記入します。ルーターや医療機器に付属するPCも忘れずに書き出しましょう。

POINT 03システム一覧をつくる

患者情報を入力・保存・送信するシステムやサービスを書き出します。クラウドサービスや生成AI、患者さんとの連絡ツールも対象です。

システム一覧(記入例)

ABCDEF
1システム・サービス名用途事業者データ保存場所リモート保守患者情報
2電子カルテ・レセコン診療録・レセプト○○株式会社国内クラウドありあり
3デジタルレントゲンX線・CT画像の管理○○メディカル院内サーバーありあり
4Web予約・問診予約・問診の受付○○株式会社国内クラウドなしあり
5院内の連絡ツールスタッフ間の連絡○○株式会社国内クラウドなし原則なし
6生成AIサービス文書の下書き○○社国外なし入力しない

1つのシステム・サービスにつき1行で記入します。リモート保守の有無は、各業者に確認して記録します。

POINT 04チェックリストで点検する

台帳と一覧ができたら、厚生労働省のサイバーセキュリティ対策チェックリストで、自院の対策を点検します。

  • 責任者の設置、機器台帳、ID・パスワード、バックアップなどの項目に「はい」「いいえ」で答える形式です。
  • 立入検査でも、このチェックリストの記入状況が確認されます。
  • 「いいえ」の項目には、担当者と対応目標日を決めましょう。[8]
このステップのポイント

決めた責任者や台帳、点検の結果は、必ず書類として残しておきましょう。立入検査では、これらの書類がそろっているかが重要な確認ポイントになります。

STEP 02アカウント・認証・権限を整える

IDと権限を一人ひとりに合わせて設定し、本人確認を強化しましょう。なりすましや不正利用を防ぎ、誰が操作したかを後から確認できるようにします。

POINT 01IDは使う人を決めて管理する

  • 電子カルテなど患者情報を扱うシステムは、スタッフごとにIDを発行するのがおすすめです。
  • 退職者や使っていないIDは、すぐに停止・削除します。
  • 同じパスワードを複数のシステムで使い回しません。[7][8]

POINT 02二要素認証を取り入れる

パスワードとスマートフォンの認証アプリのように、種類の異なる2つの要素を組み合わせて本人を確認します。

二要素認証では、覚えている情報(パスワード)と手元にある端末(スマートフォンの認証アプリ)など、異なる2種類の要素を組み合わせて本人を確認します。
パスワードの入力後に、スマートフォンの認証アプリに表示される確認コードを入力する例。指紋や顔などの生体情報も、認証の要素として使えます。

2027年4月1日時点で稼働が見込まれる医療情報システムを新たに導入・更新する際は、二要素認証またはそれに相当する対応が求められます。技術的な理由などですぐに難しい場合も、2027年度以降の直近のシステム更新までに対応が必要です。[7]

電子カルテなどのソフトとサーバーの両方について、対応状況を保守業者に確認しておきましょう。

POINT 03アクセスできる範囲を絞る

電子カルテだけでなく、GoogleドライブやOneDriveなどのファイル共有サービスも対象です。たとえば、患者情報や給与・人事の資料が入ったフォルダを、全スタッフが開ける状態になっていないでしょうか。フォルダごとに誰がアクセスできるかを確認し、必要な人だけに絞りましょう。

フォルダごとに見られる人を決める例。患者情報は診療に関わるスタッフ、給与・人事は院長・事務長のみ、院内マニュアルは全スタッフが見られるようにします。
GoogleドライブやOneDriveでは、フォルダごとに共有する人を設定できます。
  • 閲覧・修正・出力できる範囲を、担当業務に必要な分だけにします。
  • 設定を変更できる管理者権限は、必要な人に限ります。
  • 操作記録を残し、定期的に確認します。[7][8]

誰にどのIDと権限を渡したかは、利用者ID台帳に記録しておきます。退職時の削除漏れを防ぎ、定期的な見直しもしやすくなります。

このステップのポイント

1台のパソコンを共用している場合は、診療中でも無理なくIDを切り替えられるか、実際の手順で確かめておきましょう。

STEP 03ソフトと機器を整理し、運用ルールを決める

現在使っているソフトウェアや機器の状況を確認し、不要なものは削除や契約の解除で整理して、情報流出のリスクを減らしましょう。あわせて日々の運用ルールを決め、スタッフ全員で守ることで、院内のセキュリティを保ちます。[8]

POINT 01使用状況を確認し、ソフトと機器を整理する

  • ソフトやサービスごとに、使っている人と使う頻度を確認します。
  • 最後に使った時期を確認し、使われていないものを洗い出します。
  • ほかのソフトと統合して、数を減らせないか検討します。
  • 不要なものは削除するか、契約を解除します。
  • パソコンやルーターなどの更新状況と、サポート期限を確認し、機器台帳に記録します。
  • サポートが終了した機器を使い続ける場合は、対策と使用期限を決めます。
  • 院外から接続できる人と機器を限定します。

統合や契約の解除は、診療や業務に影響が出ることがあります。まずは全く使っていないものや、なくなっても影響がないものから、少しずつ整理していきましょう。

POINT 02日々のルールをスタッフと共有する

  • 席を離れるときは、画面をロックします。
  • USBメモリや私物の端末は、責任者の許可を得たものだけを使います。
  • 不審なメールや警告画面は自己判断で操作せず、直ちに責任者に報告します。

ルールは伝えるだけでなく、入職時と年1回以上の研修で、実際の画面や場面を使って確認しましょう。研修の実施日や内容は、記録に残しておきます。[9]

このステップのポイント

整理や点検は一度で終わりにせず、定期的に行いましょう。特に新しいスタッフが入ったときや担当者が変わったときは、ルールが行き届かず、思わぬ事故につながることがあります。こうした変化のタイミングでは、運用ルールをあらためて確認しましょう。

STEP 04バックアップと事故対応を準備する

万が一のトラブルに備えて、バックアップの運用をしっかり整えましょう。ただし、バックアップは取るだけでなく、「本当に戻せるか」まで確かめておくことが大切です。あわせて、システムが止まったときに診療を続ける手順と、異常に気づいたときの初動も決めておきます。

POINT 01バックアップの方法と保管場所を記録する

まずは、どのデータを、いつ、どこにバックアップしているかを台帳にまとめて記録しましょう。いざというときに、誰でも同じ手順で復旧に取りかかれます。

バックアップの記録(記入例)

ABCDEF
1システム対象データ頻度保管場所残す期間最終テスト日
2電子カルテ・レセコン診療録、レセプト毎日業者のクラウド、外付けHDD7日分2026/09/30
3デジタルレントゲンX線・CT画像毎日画像サーバー、外付けHDD7日分2026/09/30
4Web予約・問診予約、問診の記録自動業者のクラウド業者に確認業者に確認

1つのシステムにつき1行で記入します。外付けHDDは作業が終わったら取り外し、金庫などで保管します。

記録をもとに、次の点も確認しておきます。

  • カルテ・レントゲン画像・予約情報が、バックアップの対象に入っているかを確認します。
  • いつの時点まで戻せるか、復元にどのくらい時間がかかるかを確認します。
  • バックアップのうち少なくとも1つは、ネットワークから切り離して保管します。
  • 年1回以上、業者と復旧の手順を確認します。[7][10]
診療に使うデータをバックアップし、ネットワークから切り離した場所に保管します。復元テストを行い、戻せる時点とかかる時間を確認します。
復元テストは、診療で使っているデータを上書きしない環境で行います。

POINT 02システム停止中の診療手順を決める

  • 診療を続けるか延期するかの判断基準と、判断する人を決めます。
  • 紙で患者情報や診療内容を記録し、受付・会計を行う手順を決めます。
  • 患者さんへの説明方法と、院内・保守業者の緊急連絡先を決めます。

これらはBCP(事業継続計画)としてまとめ、パソコンが使えなくても確認できるよう紙でも保管しておきましょう。[10]

院内・業者・行政の緊急連絡先は連絡体制図にまとめ、受付や院長室に掲示しておくと、いざというときに迷わず動けます。[8]

POINT 03異常に気づいたときの初動を決める

異常に気づいたら、決めておいた手順に沿って機器の使用を止め、通信を遮断します。そのうえで、院内の責任者と保守業者に連絡してください。

自己判断で初期化はせず、発見した時刻や画面の状態を記録しておきます。サイバー攻撃が疑われる場合は、厚生労働省への連絡も必要です。[11]

異常に気づいたら使用を止めて記録し、院内の責任者と保守業者へ連絡します。その後、技術面の対応、診療・患者さんへの対応、連絡・報告を並行して進めます。
復旧を待つ間も、診療への対応と行政への連絡・報告は並行して進めます。
漏えい等の報告期限

個人情報保護委員会への報告が必要な場合、速報は事態を知ってから速やかに、目安として3〜5日以内に行います。確報は原則30日以内、不正な目的によるおそれがある場合は60日以内です。

本人への通知も含め、復旧作業と並行して進めましょう。[4]

このステップのポイント

トラブルが起きたあとの対応は、被害の拡大を防ぐうえで非常に重要です。ルールは決めて終わりにせず、定期的に確認や訓練を行い、いざというときにルールどおり対応できるよう備えておきましょう。

まとめ

厚生労働省のガイドラインは、ハッキングや情報漏えいなどのリスクから医院を守り、適切に対処するための指針です。まずは自院の現状を確認し、対応が必要なところから早めに進めていきましょう。

対応したあとも、ルールどおりに運用できているかの確認や、ルールそのものの見直しが欠かせません。一度整えて終わりにせず、日々アップデートしていける体制をつくっていきましょう。

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参考資料・出典

[1]厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版」(2026年6月)/「経営管理編」

[2]藤田医科大学病院「個人情報漏洩に関するご報告とお詫び」(2026年6月3日)

[3]つるぎ町立半田病院「コンピュータウイルス感染事案 有識者会議調査報告書」(2022年6月7日)

[4]個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」

[5]個人情報保護委員会「Q11-1:個人情報保護法に違反した場合の措置」

[6]個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者向けQ&A Q6-2:漏えい等が発生した場合の責任」

[7]厚生労働省「第7.0版 システム運用編」8.安全管理対策、13.ネットワーク、14.認証・認可に関する安全管理措置

[8]厚生労働省「令和8年度版 医療機関・薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」/「チェックリストマニュアル」(2026年6月)

[9]厚生労働省「第7.0版 企画管理編」

[10]厚生労働省「サイバー攻撃を想定した事業継続計画(BCP)策定の確認表のための手引き」

[11]厚生労働省「医療分野のサイバーセキュリティ対策について」

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この記事を書いた人

梅澤 幸太

歯科衛生士・プロダクトマネージャーとして、医療業界のAI/DX活用の普及に取り組んでいます。

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